食品衛生法の履歴

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■制定時の食品衛生法(1947年/昭和22年12月24日法律第233号)

(法令沿革)https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?lawId=0000039531

■現在の食品衛生法

 

【主要な改正履歴】

❶一次改正(1953年/昭和28年8月1日法律第113号):

❷二次改正(1957年/昭和32年6月15日法律第175号):

  1. 食品添加物公定書」についての規定の新設(13条/現21条
  2. 「添加物」の定義の改正:「調味、著色、著香、保存、漂白又は膨脹その他食品の加工の目的で」⇒「製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で」(2条-2項/現4条‐2項)
  3. 食品衛生管理者」についての規定の新設(19条の2/現48条32条の2/現77条

三次改正(1972年/昭和47年6月30日法律第108号):

  1. 販売等が禁止される食品及び添加物のうち「有毒な、又は有害な物質が含まれ、又は附着しているもの」を「~が含まれ、若しくは付着し、又はこれらの疑いがあるもの」に改正(4条‐2号/現6条-2号)
  2. 「一般に飲食に供されることがなかつた物」(「新開発食品」)の販売等を規制する規定の新設(4条の2/現7条-1項)

一部改正(1995年/平成7年5月24日法律第101号):

  1. 「化学的合成品」の定義(用語)の削除(2条-3項)
  2. 「天然香料」の定義の新設(現4条-3項)
  3. 厚生労働大臣が定める添加物(指定添加物)を化学的合成品に限る規定を削除(6条/現12条
  4. 農薬、飼料添加物及び動物用医薬品の成分の食品への残留限度量の基準についての規定の新設(7条の2/現13条
  5. 「総合衛生管理製造過程」(いわゆる「マル総」)についての規定の新設(7条の3/❼で削除)
  6. 既存添加物に関する経過措置を規定(「既存添加物名簿」の作成、品目の追加・消除等)(附則2〜3条)(「既存添加物名簿」は、1988年の「食品添加物の全面表示制度」の施行をうけて1989年12月に厚生省が公表した「化学合成品以外の食品添加物リスト」が元になっている)

四次改正(2002年/平成14年8月7日法律第104号):

  1. 特定の国若しくは地域の食品、添加物、器具又は容器包装を禁止できる規定の新設(9条の2/現17条
  2. 有毒・有害な物質の混入防止等の措置基準についての規定の新設(19条の18/現50条

一部改正(2003年/平成15年5月30日法律第55号):

  1. 法律の目的の改正:「飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、公衆衛生の向上及び増進に寄与すること」⇒「食品の安全性の確保のために公衆衛生の見地から必要な規制その他の措置を講ずることにより、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、もつて国民の健康の保護を図ること」(1条
  2. 販売等が規制される「新開発食品」に「一般に食品として飲食に供されている物であつて当該物の通常の方法と著しく異なる方法により飲食に供されている物」を追加(7条-2・4・5項)
  3. 農薬、飼料添加物及び動物用医薬品の残留限度量の基準についてポジティブリスト化(13条-3項)
  4. 食品、添加物、器具又は容器包装についての自主検査、記録の作成・保存等の努力義務を規定(3条-各項)
  5. 食品安全委員会に関わる規定を新設(附則10条)

 ※条数繰り下げ(4条→現6条、4条の2→現7条、4条の3→現9条 等)

一部改正(2013年/平成25年6月28日法律第70号):

  •  食品及び添加物の表示の基準に関する規定を「食品表示法」に移管(11条‐各項/現19条-各項)

一部改正(2018年/平成30年6月13日法律第46号):

  1. 「HACCP」による衛生管理制度の新設(51条)(総合衛生管理製造過程(いわゆる「マル総」)は廃止(経過措置:附則3条))
  2. 健康食品等の「指定成分」についての規定の新設(8条
  3. 器具又は容器包装の規格基準についてポジティブリスト化(18条(経過措置期間~2025年6月1日))
  4. 「営業届出制度」の新設(57条政令で「営業許可制度」の対象業種等の見直しも))→食品衛生法施行令第35条
  5. 自主回収(リコール)の規定(適用条項、届出の義務 等)の新設(58条食品表示法におけるリコール情報の報告制度の新設も同時に施行(10条の2

 ※条数繰り下げ(50条の2→現51条、71条→現81条 等)

ペルーで1991年に発生したコレラの大流行の原因に関しての「少数意見」のサポート(続き)

引き続き「原因は水道の塩素殺菌の中止」という神話の検証記事。こっちはGreenpeaceだけど、一部の人たちが期待するようなセンセーショナリズムはかけらもないので念のため。

1~5は否定的な科学文献、出版物。 

7~8はそれらと対照的な発言記録。 

6には、コレラ流行の終息後に、ペルーの役人たちが体面を保つために、リマには塩素殺菌をするインフラがあったにもかかわらず、EPA(米国環境保護)から受け取ったレポートのせいで塩素殺菌をしなかったと主張した、なんて与太っぽい話が書いてあるらしい()

 

1 Swerdlow DL, Mintz ED, Rodriguez M, Tejada E, Ocampo C, Espejo L, Greene KD, Saldana W, Seminario L, Tauxe RV, et al. 1992. Waterborne transmission of epidemic cholera in Trujillo, Peru: lessons for a continent at risk. Lancet 1992 Jul 4;340(8810):28-33   http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1351608  

ペルー第二の都市トルヒーリョで1991年に発生したコレラの流行を調査した。当時水道水の塩素処理は行われておらず、二次汚染も常態であった。水質に関する研究により、水質の悪化は配水と住居における貯水の過程において進行したことが明らかになった。

 

2 Besser RE, Moscoso Rojas B, Cabanillas Angulo O, Gonzalez Venero L, Minaya Leon P, Rodriguez Pajares M, Saldana Sevilla W, Seminario Carrasco JL, Highsmith AK, Tauxe RV. 1995. Prevention of cholera transmission: rapid evaluation of the quality of municipal water in Trujillo, Peru]. Bol Oficina Sanit Panam 119(3):189-194 

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7576185  

19912月のコレラ発生をうけて同じ年の9月に塩素処理が開始され、ダムと主要な配水ポイントの塩素濃度がモニターされたが、それが末端の水質にどう反映されたかは知られていないため、1993年に居住地域の30世帯について迅速検査が行った。その結果、塩素濃度に大きなばらつきがあり、水不足のために家庭で水を蓄える必要があることと相まって、保健当局が勧めるように住民が水道水を処理しなければならないことがわかった。このような調査は水質の疑わしい首都の区域で、水質に関する不可欠の情報を得るために容易に行われ、(流行の規模を抑制し)得たかもしれない

 

3 Craun, G.F. (ed.), “Safety of Water Disinfection: Balancing Chemical & Microbial Risks,” Washington, D.C.: International Life Sciences Institute, 1993. 

paperback, (http://www.amazon.com/Safety-Water-Disinfection-Balancing-Microbial/dp/0944398111)

 

4 Mujica OJ, Quick RE, Palacios AM, Beingolea L, Vargas R, Moreno D, Barrett TJ, Bean NH, Seminario L, Tauxe RV. 1994. Epidemic cholera in the Amazon: the role of produce in disease risk and prevention. J Infect Dis 169(6):1381-1384 

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8195622  

コレラの流行の発生した1991年にイキトスで行われた症例対照研究によって、コレラ様症例は、洗浄されていない果物と野菜(オッズ比8.0; 95%信頼区間 2.2, 28.9、飲用水ではそれぞれ2.9; 1.3, 6.4.)を食べたことに付随して発生していたことが明らかになった。また、酸性のtoronja(グレープフルーツ)から作られた飲料の飲用は発症と反比例していた(コレラ菌の増殖を阻害していた)。

 

5 Ries AA, Vugia DJ, Beingolea L, Palacios AM, Vasquez E, Wells JG, Garcia Baca N, Swerdlow DL, Pollack M, Bean NH, et al. 1992. Cholera in Piura, Peru: a modern urban epidemic. J Infect Dis 166(6):1429-1433 

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1431259  

コレラの流行の発生した1991年にピウラで行われた症例対照研究では、発症は煮沸されていない水の飲用、該当の屋台の飲料の飲用、屋台の食品の摂取の順で相関が認められた。また、患者は氷の入っている飲料を引用している傾向があり、氷は塩素処理が行われていないか不十分な水道水で作られ、10の水源のうち6水源で糞便性細菌が検出された。

 

6 Wills, C. “Yellow Fever Black Goddess: The Coevolution of People and Plagues,” New York, NY: Addison-Wesley Publishing Company, Inc., 1996. 

paperback, (http://www.amazon.com/Yellow-Fever-Black-Goddess-Coevolution/dp/0201328186)

 

7 Chlorine: Basic Benefits, Universal Uses Chlorine: Basic Benefits, Universal Uses Presentation Of C.T. Howlett, Vice President/Managing Director Chlorine Chemistry Council before the United Nations Economic Commission for Europe Working Party on the Chemical Industry September 27, 1995 Geneva, Switzerland. 

http://kbda.com/c3/library/cth1.html 

 

8 C.T. Howlett, Vice President/Managing Director Chlorine Chemistry Council, Presentation before the American Legislative Exchange Council Washington, D.C. December 7, 1995 

http://kbda.com/c3/library/cth3.html 


ペルーで1991年に発生したコレラの大流行の原因に関しての「少数意見」のサポート

ペルーで1991年に発生したコレラの大流行の原因に関して、「主流」の説に対して、

『都市伝説: ペルーのコレラ流行を予防原則のせいにする』http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/rachel/rachel_05/rehw_823.html

という記事があるんだけど、いろいろ調べてると無視されてるだけじゃなく、いろいろ「風評被害」(例:https://twitter.com/f_zebra/status/249418969767878656)があるようで、確かにほとんどの引用文献がリンク切れになってるので、現在読めるところを示しました。少しでもお役に立てれば幸いです。

なお、[2][3]は有料です。

 

 

[1] For a definition of an urban legend, see http://www.snopes.com/info/glossary.asp

 

[2] Imogen Evans, "Cholera on the Rocks," Lancet Vol. 341, No. 8840 (Jan. 30, 1993), pg. 300. Available at http://www.rachel.org/library/getfile.cfm?ID=539

http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/0140673693926449

 

[3] Lancet Editors, "Of Cabbages and Chlorine: Cholera in Peru," Lancet Vol. 340, No. 8810 (July 4, 1992), pg. 20. Available at http://www.rachel.org/library/getfile.cfm?ID=543

http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/014067369292427H

 

[4] Christopher Anderson, "Cholera epidemic traced to risk miscalculation," Nature Vol. 354 (Nov. 28, 1991), pg. 255. Available at

http://www.rachel.org/library/getfile.cfm?ID=540

http://legacy.library.ucsf.edu/documentStore/k/c/y/kcy83e00/Skcy83e00.pdf

https://www.industrydocumentslibrary.ucsf.edu/tobacco/docs/#id=tmmv0063

 

[5] Gregory Conko and Henry I. Miller, "Precaution (Of A Sort) Without Principle," Priorities for Health Vol. 13, No. 3 (Nov. 1, 2001), unpaginated. Available on the web site of the Competitive Enterprise Institute (http://www.cei.org/gencon/019,02243.cfm) and at http://www.rachel.org/library/getfile.cfm?ID=544

http://cei.org/op-eds-and-articles/precaution-sort-without-principle

 

[6] William Schulz, "The many faces of chlorine; Howlett and Collins square off about one of the most evocative chemicals," Chemical & Engineering News Vol. 82, No. 42 (Oct. 18, 2004), pgs. 40-45. Available at http://www.rachel.org/library/getfile.cfm?ID=542

http://pubs.acs.org/cen/ncw2004/8242chlorine.html

 

[7] David L. Swerdlow and others, "Waterborne Transmission of Epidemic Cholera in Trujillo, Peru: Lessons for a Continent at Risk," Lancet Vol. 340 No. 8810 (July 4, 1992), pgs. 28-33. Available at http://www.rachel.org/library/getfile.cfm?ID=541

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1351608

 

 [8] Joel Tickner and Tami Gouveia-Vigeant, "The 1991 Cholera Epidemic in Peru: Not a case of Precaution Gone Awry," Risk Analysis Vol. 25, No. 3 (June, 2005), pgs. 495-502. Available at http://www.rachel.org/library/getfile.cfm?ID=545

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16022685

トランス脂肪規制のことからGRASのことを調べた

アメリカ合衆国には昔から「GRAS (Generally Recognized as Safe)」という概念があって、「一般に安全である」ことに、「アメリカ人の食経験」と「科学的根拠」のいずれかの適切な根拠があれば食用にしてよいということだけど、古くから摂取していた食塩とかスパイス、さらに日本では食品添加物グルタミン酸ソーダなんかもGRAS物質になってて、別に設けられてる「食品添加物」のカテゴリーとどう区別されてるのかよくわからないところがある。

以前は「食品添加物」と同じように、国(FDA)がそれを審査して認定していたが、1997年に、企業がGRASとみなせる根拠を国に通知すれば自己責任で販売や使用が可能になる「GRAS通知制度」が新設され、FDAのサイトで現在490件のリストが公表されている。

http://www.accessdata.fda.gov/scripts/fcn/fcnNavigation.cfm?rpt=grasListing

国は企業から通知されたGRASの根拠の文献などが形式的に揃っているかどうかを確認して、その結果を公表するだけで、たとえ不備と公表されても禁止されるわけではない。

さらに、「FDA-GRAS」以外に国がいっさいかかわらない、完全に自己完結型のGRASもあって、それについては公表もされてないみたいだし実態がほとんどわからない。(「香料」はFEMAという業界団体がリストを管理しているようだ。一部が公開されている。http://www.femaflavor.org/gras)

また、容器の素材とか紙容器の表面処理剤のような、食品に接触する副次的な材料についても同じように申請-認可の枠組みがあるのだが、2000年ごろに「FCS (Food Contact Substance)通知制度」が新設され、これまでに通知された999件が公表されている。http://www.accessdata.fda.gov/scripts/fcn/fcnNavigation.cfm?filter=&sortColumn=&rpt=fcsListing

現在では、日本なら「食品添加物」になるようなものからオリゴ糖みたいなものまで、何でもかんでもGRASにして、もはや従来からある「申請-認可枠」がほとんど見向きもされなくなっているようだ(ただし、着色目的のものはなぜかこの制度を適用できない決まりがある)FDAのサイトで試しにざくっとカウントしてみると、2000年以降で申請-認可されたものが89件に対し通知されたものが1454(GRAS465件、FCS999)、さらに2009年以降の5年間では、申請-認可8件、通知545(GRAS216件、FCS329)になっていて、つまり新しい物質はほとんど国が評価していないという状態になっている。

これらの「通知制度」は、ようするに国が審査して認可するプロセスにかかる時間やコストを省くという目的を最大限に実現した、地球上に類をみない規制緩和制度ということだ。

もちろんすべてのものが厳格な審査を受けて国の認可責任のもとで使用されるべきというわけではないだろうが、ここしばらくはそのあまりの野放しぶりが会計監査院(GAO)というれっきとした政府機関からも問題視され始めていて、見直しという話も具体化しそうになっていたようだ。

そういうことを考え合わせると、トランス脂肪に対するこのドラスティックっぽい方針は、トランス脂肪酸を含む硬化油脂=部分水素添加油(partially hydrogenated oils (PHOs))スケープゴートにしてFDAGRASに対する安全対策と監視の機能が健全に働いていることをアピールし、GRAS通知制度を死守する意図もありそうな気がする。http://www.fda.gov/ForConsumers/ConsumerUpdates/ucm372915.htm

もちろん、TPPもあることだし、少しでも「通知制度」の抑制につながればわるいことじゃないのだろう。しかし、マーガリン、ベーカリー、スナックなどの固形状油脂の需要を満たすためにPHOが開発されたという背景があるわけだから、その最大消費国がこれだけ大々的にぶち上げると、天然固形状油脂のパーム油、やし油、牛脂、豚脂などの需要が一気に増え、反対に大豆油などのPHO向けの液状油脂の需要が縮小して、油脂全体の需給バランスが世界的な混乱状態に陥るなんてこともあるかもしれない。

GENESIS HALL

フェアポート・コンベンションの「ジェネシス・ホール」という曲が前から大好きなんだけど、リチャード・トンプソンの作品ということで歌詞は例によって「暗いな」ってぐらいで、結局タイトルも含めて何を歌ってるのかほとんどわからなかった。http://www.youtube.com/watch?v=K4P1F5fnXj0

 

「ジェネシス・ホール」はロンドンのスラム地区にあった廃ホテルにスカッターが住み始めてつけられた呼び名(それが何を意味してつけられたのか創世記なんて何も知らない人間にはまったくわからない)で、たぶん再開発のための取り壊しかなんかで警察が暴力的に住人を排除したことが背景にあるらしい。http://en.wikipedia.org/wiki/Unhalfbricking

 

さらに彼のお父さんがスコットランドヤードの刑事か警官で、この処分の執行に加わっテいた、とだいたい想像できてしまう話なんだけど、おそらく彼はいわゆる社会運動とは無縁のミュージシャンなので、そういうコンテキストは考えられなくて、でも追いたてられるホームレスへの同情とか、そんな冷酷な仕打ちをする権力やそれに従うしかない父親に対する怒りとか、もちろんそんな「ふつうの」感情を前提にしたうえで、うまく表現できないけれどあえて形容すれば、それなのにすごい「叙事的」なのだ。

 

だいたいyouheが誰を指しているのかわからないというか、フレーズによって断りなく入れ替わってるらしいのが謎だ。それぞれがそれぞれの立場にあることなど酷薄な偶然に過ぎない、みたいなありがちな「解釈」もなりたつのだろうか。

 

あと、コーラスの”helpless and slow”というフレーズは、枕草子の「すさまじきもの」に近い含意を感じてしまう。「すべての人間は場違いな生を生き抜くしかない」なんちゃって。。。

 

昼ほゆる犬  春の網代  三、四月の紅梅の衣  牛死にたる牛飼ひ  児死にたる産屋  人熾さぬ炭櫃、地火炉  博士のうち続き女子生ませたる  方違へに行きたるに、あるじせぬ所

 

だから私などがこの詞に共感するなんてありえてはいけないと「思想」したりするのもいとすさまじいのだ、きっと。

でも、それでいいよね。

 

 

GENESIS HALL

 

My father he rides with your sheriffs

And I know he would never mean harm

But to see both sides of a quarrel

Is to judge without hate or love

 

Oh, oh, helpless and slow

And you don't have anywhere to go

 

You take away homes from the homeless

And leave them to die in the cold

The gypsy who begs for your presents

He will laugh in your face when you're old

 

Oh, oh, helpless and slow

And you don't have anywhere to go

 

Well one man he drinks up his whiskey

Another he drinks up his wine

And they'll drink 'till their eyes are red with hate

For those of a different kind

 

Oh, oh, helpless and slow

And you don't have anywhere to go

 

When the rivers run thicker than trouble

I'll be there at your side in the flood

T'was all I could do to keep myself

From taking revenge on your blood 

 

Oh, oh, helpless and slow 

And you don't have anywhere to go 

Oh, oh, helpless and slow 

And you don't have anywhere to go

 

http://www.richardthompson-music.com/song_o_matic.asp?id=113

 

ドイツの母の歌

 

ドイツの母の歌

ベルトルト・ブレヒト(1939)

 

息子よ あなたに長靴と

茶色のシャツをプレゼントしたね

そのとき私が今知っていることを知っていたら

私は木で首をつっていただろう

 

息子よ 入隊の日にあなたが手を高く上げて

ヒトラーに敬礼するのを見た

その時私は知らなかったのだ

あなたはやがてその手が腐りはてるのを見ることになるのを

 

息子よ あなたが話す声が今も聞こえる

英雄の種族について語る声が

私は知りもせず疑いもせず気づきもしなかったのだ

あなたが彼らの拷問房で働いていることを

 

息子よ あなたがヒトラーの

勝利の隊列に連なって行進するのを見た

私は知らなかったのだ

私の前を通り過ぎたあなたが二度と帰らないことを

 

息子よ あなたは私にドイツのことを話したね

それはまさに栄光を手にしようとしていると

私は何も知らなかったのだ

それが灰と血にまみれた石ころになろうとしていたことを

 

あなたが茶色のシャツに袖を通そうとしたとき

私はなぜ大声でそれをやめさせなかったのだろう

それは私が今知っていることを知らなかったからだ

 

そのシャツがあなたの経かたびらだったということを

 

 

(英訳テキスト:エリック・ベントリーによる?)

 

 

Song of the German Mother 

My son, your shiny boots and

Brown shirt were a present from me:

If I’d known then what I know now

I’d have hanged myself from a tree.

 

My son, when I saw your hand raised

In the Hitler salute that first day

I didn’t know those who saluted

Would see their hand wither away.

 

My son, I can hear your voice speaking:

Of a race of heroes it tells.

I didn’t know, guess or see that

You worked in their torture cells.

 

My son, when I saw you marching

In Hitler’s victourious train

I didn’t know he who marched off then

Would never come back again.

 

My son, you told me our country

Was about to come into its own.

I didn’t know all it would come to

Was ashes and bloodstained stone.

 

I saw you wearing your brown shirt.

I should have protested aloud

For I did not know what I now know:

 

It was your burial shroud.

 

http://kampfgruppe.tumblr.com/post/9335365621/my-son-your-shiny-boots-and-brown-shirt-were-a

 

 

(ドイツ語原詞)

Lied einer deutschen Mutter

 

Mein Sohn, ich hab dir die Stiefel

Und dies braune Hemd geschenkt:

Hätt ich gewußt, was ich heute weiß

Hätt ich lieber mich aufgehängt.

 

Mein Sohn, als ich deine Hand sah

Erhoben zum Hitlergruß

Wußte ich nicht, daß dem, der ihn grüßet

Die Hand verdorren muß.

 

Mein Sohn, ich hörte dich reden

Von einem Heldengeschlecht.

Wußte nicht, ahnte nicht, sah nicht:

Du warst ihr Folterknecht.

 

Mein Sohn, und ich sah dich marschieren

Hinter dem Hitler her

Und wußte nicht, daß, wer mit ihm auszieht

Zurück kehrt er nimmermehr.

 

Mein Sohn, du sagtest mir, Deutschland

Wird nicht mehr zu kennen sein.

Wußte nicht, es würd werden

Zu Asche und blutigem Stein.

 

Sah das braune Hemd dich tragen

Habe mich nicht dagegen gestemmt.

Denn ich wußte nicht, was ich heut weiß:

 

Es war dein Totenhemd.

 

http://www.freesoft-board.to/archive/t-207493.html

 

 

私はこの詞が、戦場に送りだした息子の死を悲嘆する母親という普遍的な「反戦歌」のステレオタイプからいかにもブレヒト的に逸脱しているとずっと感じている。

それをファシズムによる大衆の動員と組織化をやすやすと許した「此方」への自己批判だと「説明」してしまえば身もふたもないけれど、その逸脱の距離と深さについて考察することは、原発やレイシズムや性差別や貧困・・・といったいっさいの差別と抑圧に反対する根拠やあるいは戦略の一つになるかもしれない。

第068回国会 社会労働委員会 第37号 昭和四十七年六月十二日(月曜日)

食品衛生法の一部を改正する法律案

記事抜粋

○近江委員 新たな公害源として食品汚染を起こす、そういう化合物の規制とかいろいろな問題があるわけですが、こういう問題に関連して、今回のこういう食品衛生法の改正案によってどういう配慮が行なわれておるのですか。厚生省にお聞きします。
○浦田政府委員 一つは輸入食品等の問題並びにこれは国内の製品についても言われることでございますけれども、今度は新たな規定を設けまし て、新たにこちら――といいますのは、都道府県知事ということになるわけでありますが、こちらのほうから必要な検査を受けさせまして、データを提出させる といったようなことでもって検査の実効をさらに期したいと思っております。
 それから、もう一つの点といたしましては、現在の法律では食品または添加物によりまして事故が生じた場合、その原因物質が特定できなければ措置がとれな かったわけでございますけれども、今回の改正におきましては、それを事前の段階において食品または添加物に有害な物質等が含まれておる、あるいは付着して おるという疑いのある段階で、販売等の禁止の措置をとれるといったような措置をとろうと思っております。

出典 http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/068/0200/06806120200037c.html