GENESIS HALL
フェアポート・コンベンションの「ジェネシス・ホール」という曲が前から大好きなんだけど、リチャード・トンプソンの作品ということで歌詞は例によって「暗いな」ってぐらいで、結局タイトルも含めて何を歌ってるのかほとんどわからなかった。http://www.youtube.com/watch?v=K4P1F5fnXj0
「ジェネシス・ホール」はロンドンのスラム地区にあった廃ホテルにスカッターが住み始めてつけられた呼び名(それが何を意味してつけられたのか創世記なんて何も知らない人間にはまったくわからない)で、たぶん再開発のための取り壊しかなんかで警察が暴力的に住人を排除したことが背景にあるらしい。http://en.wikipedia.org/wiki/Unhalfbricking
さらに彼のお父さんがスコットランドヤードの刑事か警官で、この処分の執行に加わっテいた…、とだいたい想像できてしまう話なんだけど、おそらく彼はいわゆる社会運動とは無縁のミュージシャンなので、そういうコンテキストは考えられなくて、でも追いたてられるホームレスへの同情とか、そんな冷酷な仕打ちをする権力やそれに従うしかない父親に対する怒りとか、もちろんそんな「ふつうの」感情を前提にしたうえで、うまく表現できないけれどあえて形容すれば、それなのにすごい「叙事的」なのだ。
だいたいyouとheが誰を指しているのかわからないというか、フレーズによって断りなく入れ替わってるらしいのが謎だ。それぞれがそれぞれの立場にあることなど酷薄な偶然に過ぎない、みたいなありがちな「解釈」もなりたつのだろうか。
あと、コーラスの”helpless and slow”というフレーズは、枕草子の「すさまじきもの」に近い含意を感じてしまう。「すべての人間は場違いな生を生き抜くしかない…」なんちゃって。。。
昼ほゆる犬 春の網代 三、四月の紅梅の衣 牛死にたる牛飼ひ 児死にたる産屋 人熾さぬ炭櫃、地火炉 博士のうち続き女子生ませたる 方違へに行きたるに、あるじせぬ所
だから私などがこの詞に共感するなんてありえてはいけないと「思想」したりするのもいとすさまじいのだ、きっと。
でも、それでいいよね。
GENESIS HALL
My father he rides with your sheriffs
And I know he would never mean harm
But to see both sides of a quarrel
Is to judge without hate or love
Oh, oh, helpless and slow
And you don't have anywhere to go
You take away homes from the homeless
And leave them to die in the cold
The gypsy who begs for your presents
He will laugh in your face when you're old
Oh, oh, helpless and slow
And you don't have anywhere to go
Well one man he drinks up his whiskey
Another he drinks up his wine
And they'll drink 'till their eyes are red with hate
For those of a different kind
Oh, oh, helpless and slow
And you don't have anywhere to go
When the rivers run thicker than trouble
I'll be there at your side in the flood
T'was all I could do to keep myself
From taking revenge on your blood
Oh, oh, helpless and slow
And you don't have anywhere to go
Oh, oh, helpless and slow
And you don't have anywhere to go
http://www.richardthompson-music.com/song_o_matic.asp?id=113